抄録
硬骨は、姿勢の維持や内臓の保護、血球の生産など、ヒトが生命活動を行っていく上で重要な役割を担っている。生体組織工学技術を利用して、損傷した硬骨を人工的に再建する場合には、骨芽細胞の移動ならびに増殖のための足場となる高分子多孔体(スキャホールドと呼ばれる)が必要である。われわれはこれまでに、グルコン酸を修飾したキトサン(GC)の水溶液を凍結後、それを融解するだけで、キトサンスキャホールドを作製できることを見出している。本研究では、擬似体液への浸漬により、GCスキャホールド表面を骨伝導能の高いヒドロキシアパタイト(HAp)で被覆できるか調査した。GCスキャホールドをそのまま擬似体液に浸漬しただけでは、スキャホールド表面にHApはほとんど生成しなかった。一方、擬似体液中でのHApの不均一核生成を誘発するシリカ(SiO2)ナノ粒子をGCスキャホールドに組み込むことで、スキャホールドをHApで被覆することができた。また、そのHAp/GCスキャホールド内で骨芽細胞としての特性を有するMG63細胞は増殖できた。以上より、本研究のHAp/GCスキャホールドは硬骨再建用スキャホールドとして有用であることが示唆された。