抄録
リチウム二次電池は電気自動車用電源として最有力であるが、その寿命評価やバッテリーマネージメントシステム(BMS)では、電池残容量や容量劣化の程度を知るために、電池の過電圧成分の分析が行われる。仁科他(2014)では、セパレータ部分の濃度緩和から導出した式が、定電流充放電時の電流遮断に伴う電池全体の過電圧変化を表現できることを報告したが、その原理的な源泉が説明できなかった。また、実際のリチウムイオン二次電池の過渡応答には初期に電位停滞領域が見られるが、これを説明する理由が不明なままであった。本研究では、この点について理論的な考察を進め、電解液のイオン抵抗が支配的な条件において電解液側での活物質に起因する容量成分側の緩和が時間の平方根に比例して過電圧が緩和する源泉であり、セパレータ部分による全体的な過電圧シフト分の緩和が電位停滞領域の原因として妥当なものであると考えられた。