科学・技術研究
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原著
ストレス緩和のための聴覚・嗅覚刺激が前頭前皮質に及ぼす影響
佐藤 苑子渡部 誠二柳本 憲作宍戸 道明
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2017 年 6 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

現代社会において過度なストレスを抱え、心身に影響を及ぼす人が増加している。ストレスを緩和させる方法としては、音楽鑑賞やアロマテラピーが挙げられる。これらの方法は、手軽に行えることから、補完代替医療への応用が期待されている。しかし、その効果は官能評価に依存している。本研究では、近赤外線分光法によって、安静時およびストレス負荷時から聴覚・嗅覚刺激を生体に与え、前頭前皮質のOxy-Hb濃度を計測し、生体への影響の評価を行った。被験者10名(男性6名、女性4名)に対し、①安静と刺激を交互に与える実験、②ストレスと刺激を交互に与える実験を行った。安静時間は1から10の数を繰り返し数えることを求めた。刺激時間では、聴覚刺激は1/fゆらぎをもつ3種類の音楽を聴取させ、嗅覚刺激はリラックス効果を有するとされる3種類の精油を吸入させた。ストレス時間は百マス計算を行わせた。Oxy-Hb濃度変化は、実験①の聴覚刺激および実験②の全刺激において、時間の経過と共にその濃度が減少していた。さらに、各時間におけるOxy-Hb濃度の平均値を求め、その差を比較し各刺激の評価を行った。実験①では、聴覚刺激時は安静時よりもOxy-Hb濃度が減少した。実験②では、Oxy-Hb濃度はストレス時よりも全刺激において減少が確認された。また、両実験におけるOxy-Hb濃度差を、t検定を用いて比較した結果、全刺激における左前頭前皮質においてOxy-Hb濃度の有意差が確認された(p < 0.05)。よって、本実験で使用した刺激は、ストレス緩和において有効性があることが示唆される。

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