抄録
20年ほど前にブタペスト宣言で科学と社会の関係が正面から問題とされ、その後SDGsなども提起され、科学技術社会論(STS)の研究も進んできた。人々の科学観と、それを理論的に表現した科学論も変化した。科学と社会をめぐる現在の一つの重要な問題は、「科学の不定性」がある領域で社会が何かを決定する場面である。「科学に基づく」政策がしばしば失敗したことから公衆の科学不信が生まれ、決定への市民参加が求められ、それを後押しする研究もあらわれた。コリンズの「科学論の第三の波」はそれに対する批判として、さまざまな議論をまきおこした。そこでの重要な問題は、「専門知」の性格をめぐる問題と「科学のノルム」をめぐる問題であり、その議論は技術者倫理や科学コミュニケーションにも示唆するところがある。