自動車の運転に支障を及ぼす四肢または体幹に障害がある場合、日本の道路交通法は障害の程度に応じた補助装置の取付けを必要条件としている。しかし、健常者の運転を前提に設計された自動車に後付けするため、障害を完全に補完することはむつかしい。本研究では、脊髄損傷者の自動車運転における上体の姿勢安定保持を支援できる座席と手動運転装置のグリップのデザイン開発を行った。姿勢安定保持具の設計には2つの特徴がある。身体を支持する左右のプレートを運転座席の胸部水準の高さに設け、カーブなどで姿勢のバランスが崩れた時でも上体の横揺れを支持できる。大腿部・腰部だけではなく上半身を安定させるために座面前縁の三角錘状の隆起形状を設け、大腿部の外側と内側の両側から姿勢を支える座席構造をもつ。また、手動運転装置を確実に握ることができない場合でも、残存する手掌握力で把持できるグリップ部分の開発を行った。