現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
ハーバーマス社会理論における公共圏論の位置
システム的連関と市民的な社会領域との和解をめぐって
飯島 祐介
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 1 巻 p. 57-69

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抄録

ハーバーマスの公共圏論は、既に様々な文脈で取り上げられ、厳しい批判にも晒されている。しかし、それがハーバーマスの理論体系の中でいかなる位置を占めるのかという点については、必ずしも十分な検討がなされていない。本稿ではこの点について検討し、ハーバーマスにとって公共圏論は主著と自他ともに認める『コミュニケイション的行為の理論』に生じた課題への応答であることを明らかにしたい。さらに、この課題はいわゆる「新しい市民社会論」にも生じうるものであり、ハーバーマスは公共圏論によって現代の社会理論に重要な貢献をなすことを明らかにしたい。すなわち、ハーバーマスの公共圏論は、システム的連関に対して市民的と形容しうる社会領域の現存を図ろうとするときに、しかもシステム的連関に一定の合理性を認めながらそうしようとするときに、きわめて有益な洞察を含んでいるのであり、たしかに多くの問題を内包しているとしても、彼の理論体系の中で枢要な位置を占めるのである。

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© 2007 日本社会学理論学会
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