抄録
社会学理論は、社会学が社会に対して確実な知識を提供するために、継続的に批判的に検討されるべき「仮説」である。そして、これまでの社会学理論で、最も批判的に検討されてきた「仮説」は社会学的機能分析、特に構造一機能分析をおいて他にないだろう。T. ParsonsやR. Merton、そして日本の社会学者達によって彫琢された構造一機能分析は、その科学的説明としての要件を十分に満たしていないとして批判され、次第に「凋落」していく。しかし、この時に批判の対象となっていたのは、構造一機能分析であり、構造一機能分析以外の社会学的機能分析が、「仮説」としての社会学理論の役割を担いうるかを検討する必要がある。この構造一機能分析を批判的に継承しつつ、新しい社会学的機能分析のひとつとして、N. Luhmannの機能分析を挙げることができる。
本稿では、Luhmann機能分析の検討を通して、以下の3点を明らかにした。( 1 )Luhmann機能分析は、システム合理性概念を導入し、システム合理性を規準にして諸可能性を比較する分析方法であり、因果論的な構造一機能分析とは異なっており、さらには論理実証主義の乗り越えとして位置づけることができる。( 2)Luhmannの「比較」概念は、後のLuhmann理論における「観察」概念を導入する土台となっている。( 3) Luhmann機
能分析は、経験的な対象から距離をとることによって、実践的な問題を理論的に扱うことを可能にすると同時に、理論的に構成された選択肢を実践的な選択として用いることを可能にしている点で、理論と実践との橋渡しという機能を有しており、特に規範的な問題に対して有効な方法であると言える。したがって、Luhmann機能分析を、経験的及び理論的に検討することを通して、「仮説」として継承していくべきである。