抄録
本稿は、多摩地域における知的障害当事者への支援活動に基づき、ケアや承認を論じる際にしばしば取り上げられる、「決定」「介入」と「帰属」「分配」について考察を加える。知的障害の当事者には決定が困難だとみなされがちだが、実際には、当事者による決定を周囲が理解できなかったり、決定に必要な情報を周囲が当事者に伝えられなかったりするとも言える。当事者の自己決定を尊重するというとき、その決定プロセスに支援者や周囲がすでにどう介入してしまっているのか、それ自体を相対化することが必要になる。このことは、分配や帰属という制度レベルにも影響している。その人の主体性をそれとして尊重するためには制度的分配が必要だが、制度的分配を活用するためには当事者をよく知る支援者によるきめ細やかな支援が必要である。決定と介入の割り切れなさはひとつの関係性の内部では解決不能なため、多摩地域では複数帰属という手法に取り組んでいる。