西日本社会学会年報
Online ISSN : 2434-4400
Print ISSN : 1348-155X
特集:熊本地震と社会学 ― 被災のリアリティと政策形成を繋ぐ視点 ―
中間支援組織「ふるさと発・復興志民会議」の形成過程とその挑戦
徳野 貞雄
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 16 巻 p. 43-59

詳細
抄録

 熊本地震発生直後から、半当事者として熊本震災への支援活動とその組織化に取り組んだ筆者の行動記録をベースとした報告である。以下、次のような5つの事象について報告している。

1) 熊本震災は「二重の複合型震災」であった。すなわち、4月の地震による震災と6月の集中豪雨による複合震災であり、同時に熊本城や益城町等の「マチ型震災」と県下一円の農山村に広がる「ムラ型震災」の複合震災であった。

2) 震災直後の急性期の支援活動は、『震災マージナル理論』とも言える。地域づくり活動を行っていた近接の人々が、自主的に動いて初期の支援活動を始めていた。

3) 中間支援団体の形成過程は、5月3日の『熊本・大分新(震)興ネットワーク』(情報プラットホーム)、7月24日に任意団体「熊本復興会議」を結成し、本格的に震災支援活動を初め、2017年4月に一般社団法人化して「ふるさと発・復興志民会議」を立ち上げた。

4)【見える震災】 と【見えない震災】を構造的に分類し、その対応主体の相違から復旧・復興の課題を考察している。

5) 震災時の「災害ボランティアセンター」に農業支援はなく、制度的不作為を指摘した。また、農家からの農業支援は微弱である。変わって、消費者の農作業ボランティアが活発であることを発見した。

著者関連情報
© 2018 西日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top