西日本社会学会年報
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意味の相互作用と表情の相互作用
石橋 潔
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2023 年 21 巻 p. 53-63

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抄録

 行為論の多くは、生活者の日常的な視点を強調する。そして生活者が日常のなかで出会う、空間的に近接する社会関係、つまり対面的関係に特別な位置づけを与えていることが多い。しかし行為論を、意味の相互作用だけで基礎づけると、対面的な社会関係を十分に説明できない。この論文では、この問題をゴフマンが抱えたアポリア、そして「漂流」(drift)という場からの逸脱がおきる現象に焦点をあてて考察する。

 対面的相互作用では、集団内部に自然発生的に不均一さが生まれる。この現象は、「意味」が共有されていくという相互作用だけでは十分に説明できない。それを説明するためには、表出された感情の相互作用――ここではそれを「表情の相互作用」と呼ぶ――を組み込む必要がある。

 この表情の相互作用は、間身体的、間主観的に作用し、逸脱を増幅させる性質をもつ。そしてこの相互作用は、集団や社会関係の内部にゆらぎを生み出す。この表情の相互作用に着目することで、「出会い」という社会の創発性を説明することができるだろう。

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