抄録
長年、Be星(γ Cas型変光星)の測光・分光観測が行われているが、星周円盤への角運動量輸送機構(連 星系の場合、伴星の寄与もあるのか)等、明らかになっていないことも多い。2018年9月から学校天文台に ある小口径望遠鏡+低分散分光器を用いて、複数のBe星の分光モニター観測を行った。観測結果より「Be 星の伴星が近星点を通過するときの潮汐力で円盤がリング化する」という仮説を立てた(石田2022, Stars and Galaxies, 5, 10)。これを検証するため、兵庫県立大学西はりま天文台のなゆた望遠鏡を用い、Be星δ Sco とπ Aqrにおいて、それぞれの伴星が近星点を通過した時と後で中分散分光観測を行った。BeSS database の解析結果も合わせると、円盤のリング化は見られなかった。学校天文台での観測と合わせると、δ Scoの 円盤は、有効温度が下がって膨張していると予想され、今後は消滅に向かう可能性がある。π Aqrの円盤 は、近星点前後で円盤の有効温度が変化する傾向がある。これらより、Be星の円盤への角運動量輸送機構 に、伴星が大きく影響を与えている可能性がある。