抄録
宇宙環境下において宇宙機用材料等から放出される分子状汚染物質は宇宙機表面へ付着し,熱制御材の太陽光吸収率の増加や光学系の反射率・透過率の低下を引き起こすことで,ミッションへ悪影響を及ぼすことが知られている.宇宙機表面に対する分子状コンタミネーション付着防止に関する基礎的な知見を得るため,真空中・紫外線照射環境下での光触媒による付着防止実験を行った.コンタミネーションモデル物質として,スクアレン,テトラメチル・テトラフェニル・トリシロキサン,オレアミド,フタル酸ジエチルヘキシルを実験に用いた.また,光触媒には二酸化チタン粒子,二酸化チタンをコーティングした基板を用いた.二酸化チタンには,真空中においてもすべてのモデル物質に対する重量減少効果が観察された.また,二酸化チタンをコーティングした基板については,紫外線照射時間の経過とともに透過率が増加する現象が観察された.