聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
聖マリアンナ医科大学病院Stroke Care Unitにおける超急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法
〜川崎脳卒中ネットワークデータベースとの比較〜
山田 浩史長谷川 泰弘
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2017 年 45 巻 1 号 p. 31-39

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抄録

川崎市では,tPA静注療法を行う13施設と川崎市消防局により川崎脳卒中ネットワーク(Kawasaki Stroke Network; KSN)が立ち上げられ,当院が開発したMaria prehospital stroke scale (MPSS) を用いた脳卒中患者の病院前トリアージと,tPA静注療法を念頭に置いたバイパス搬送が行われている。本研究の目的は,市全域のMPSS搬送例の治療実績と当院Stroke Care Unit (SCU) でのtPA静注療法の実績を比較し,今後の課題を明らかにすることにある。対象は2010年〜2015年の6年間に当院に入院した脳梗塞1545例で,tPA静注療法は89例に行われた。また市全域のMPSS搬送4429例の診療実績を解析し比較した。当院に入院した脳梗塞全症例のうちtPA静注療法施行率は5.8%,MPSS搬送症例の脳梗塞では23.1%であった。tPA投与24時間前後のNational Institute of Health Stroke Scale (NIHSS) は有意に改善し,退院時modified Rankin Scale (mRS) 0-1率は,KSN 13施設31.4%,当院SCU 36.4%であった。tPA静注療法が行われた症例でMPSS搬送群 (n = 55) とその他群 (n = 34) で比較すると,MPSS搬送群では発症からtPA静注までの時間が短縮され,退院時mRS 0-1率が高かった。継続的な救急隊との連携が重要である。

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© 2017 聖マリアンナ医科大学医学会
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