聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
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45 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 〜川崎脳卒中ネットワークデータベースとの比較〜
    山田 浩史, 長谷川 泰弘
    2017 年45 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー

    川崎市では,tPA静注療法を行う13施設と川崎市消防局により川崎脳卒中ネットワーク(Kawasaki Stroke Network; KSN)が立ち上げられ,当院が開発したMaria prehospital stroke scale (MPSS) を用いた脳卒中患者の病院前トリアージと,tPA静注療法を念頭に置いたバイパス搬送が行われている。本研究の目的は,市全域のMPSS搬送例の治療実績と当院Stroke Care Unit (SCU) でのtPA静注療法の実績を比較し,今後の課題を明らかにすることにある。対象は2010年〜2015年の6年間に当院に入院した脳梗塞1545例で,tPA静注療法は89例に行われた。また市全域のMPSS搬送4429例の診療実績を解析し比較した。当院に入院した脳梗塞全症例のうちtPA静注療法施行率は5.8%,MPSS搬送症例の脳梗塞では23.1%であった。tPA投与24時間前後のNational Institute of Health Stroke Scale (NIHSS) は有意に改善し,退院時modified Rankin Scale (mRS) 0-1率は,KSN 13施設31.4%,当院SCU 36.4%であった。tPA静注療法が行われた症例でMPSS搬送群 (n = 55) とその他群 (n = 34) で比較すると,MPSS搬送群では発症からtPA静注までの時間が短縮され,退院時mRS 0-1率が高かった。継続的な救急隊との連携が重要である。

  • 佐々木 貴浩, 野田 顕義, 嶋田 仁, 宮島 伸宜, 大坪 毅人
    2017 年45 巻1 号 p. 41-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー

    目的:絞扼性腸閉塞は緊急手術を要し,癒着剥離のみで終了する場合と壊死により腸管切除が必要な場合がある。今回,開腹歴のない絞扼性腸閉塞症例において,低侵襲で終わる剥離のみと腸管切除が必要な症例を比較し,腸管切除に至る症例の危険因子を検討した。
    対象及び方法:開腹歴のない絞扼性腸閉塞で手術をおこなった32例,(腸管切除なし15例,腸管切除あり17例)を対象とした。検討項目は患者背景因子(年齢,性別,Body Mass Index(以下BMI),既往症),術前因子(白血球数,CRP,Systemic Inflammatory Response Syndrome(以下SIRS)),CT所見,発症から手術までの時間),術後因子(手術時間,在院日数,合併症,腸閉塞の原因)の各項目をretrospectiveに検討した。
    結果:腸管切除ありの平均年齢70.3±14歳,男性6例,女性11例,白血球数12782±4527/μl,CRP 2.26(0.03–11) mg/dl,SIRSを満たす症例は4例,手術までの時間は15.8(6–52) 時間であった。腸管切除なしと比較すると,腸管切除ありは女性に多く,白血球数,CRPは高く,発症から手術までの時間は長い結果であった。
    結論:開腹歴のない絞扼性腸閉塞において,女性で術前炎症反応が高く,発症から手術までの時間が長い症例は腸管切除の危険性が高いと思われた。

症例報告
  • 今泉 太一, 新谷 亮, 中野 茉莉恵, 足利 朋子, 橋本 修二, 栗原 八千代, 辻 志穂, 佐藤 英章, 古田 繁行, 相田 芳夫, ...
    2017 年45 巻1 号 p. 49-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/29
    ジャーナル フリー

    猫ひっかき病は主として猫によるひっかき傷や咬傷を受けた後に発症する人獣共通感染症の一つである。近年のペットブームもあり増加傾向にある。発熱,リンパ節腫脹をきたし医療機関を受診しても,猫ひっかき病の可能性を考慮しなれば診断に至ることは難しい。左大腿部腫瘤を主訴に来院した猫ひっかき病の一例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する。症例は13歳,女児。入院2週間前より左大腿部内側の腫瘤及び圧痛を自覚するようになった。増大傾向にあったため近医整形外科を受診した。単純CT検査で左大腿内側の軟部腫瘤を認め精査加療目的に当院紹介となった。血清抗体価検査でB. henselae-IgM陰性,B. henselae-IgG 1024倍,リンパ節生検でB. henselae-PCRが陽性となった。以上より猫ひっかき病と診断した。猫飼育歴はあるものの,猫からの受傷歴は認めなかった。入院後詳細な問診をし,猫ノミに何度も噛まれていたことが発覚した。感染経路と考えられた。猫ひっかき病の診断には,ペットからの受傷歴だけではなく,動物接触歴を詳細に問診することが重要である。

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