2017 年 45 巻 1 号 p. 49-54
猫ひっかき病は主として猫によるひっかき傷や咬傷を受けた後に発症する人獣共通感染症の一つである。近年のペットブームもあり増加傾向にある。発熱,リンパ節腫脹をきたし医療機関を受診しても,猫ひっかき病の可能性を考慮しなれば診断に至ることは難しい。左大腿部腫瘤を主訴に来院した猫ひっかき病の一例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する。症例は13歳,女児。入院2週間前より左大腿部内側の腫瘤及び圧痛を自覚するようになった。増大傾向にあったため近医整形外科を受診した。単純CT検査で左大腿内側の軟部腫瘤を認め精査加療目的に当院紹介となった。血清抗体価検査でB. henselae-IgM陰性,B. henselae-IgG 1024倍,リンパ節生検でB. henselae-PCRが陽性となった。以上より猫ひっかき病と診断した。猫飼育歴はあるものの,猫からの受傷歴は認めなかった。入院後詳細な問診をし,猫ノミに何度も噛まれていたことが発覚した。感染経路と考えられた。猫ひっかき病の診断には,ペットからの受傷歴だけではなく,動物接触歴を詳細に問診することが重要である。