2017 年 45 巻 3 号 p. 199-206
統合失調症の病態発現において,酸化ストレスの関与が示されている。これまでに非定型抗精神薬は抗酸化作用を有することが報告されているが,様々な臨床症状を持つ統合失調症の病態発現機序および抗精神病薬の神経細胞に対する作用は未解明な部分が多い。本研究では,非定型抗精神病薬であるアリピプラゾールの神経細胞に対する作用を明らかにするために,ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて,液体クロマトグラフ質量分析法によるショットガンプロテオミクス解析を行った。その結果,アリピプラゾール添加SH-SY5Y細胞において抗酸化酵素のperoxiredoxin (Prx) 1と6が同定されたことから,アリピプラゾール添加による抗酸化酵素の発現変化を検討した。SH-SY5Y細胞においてアリピプラゾール添加によりPrx6とsuperoxide dismutase (SOD) 1の有意なタンパク質発現増加が認められた。一方で,Prx1とSOD2,カタラーゼ,グルタチオンペルオキシダーゼの発現には変化が見られなかった。
これらのことから,アリピプラゾールは神経細胞においてPrx6とSOD1の発現増加を介した抗酸化作用を有することが示唆された。