聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
透過型電子顕微鏡による評価を利用したカニクイザルを用いた卵巣組織凍結閉鎖型デバイスの開発
阿部 恭子杉下 陽堂中嶋 真理子今西 博治西島 千絵五十嵐 豪鈴木 直
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2017 年 45 巻 3 号 p. 217-226

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抄録

目的:若年がん患者に対する妊孕性温存療法の一つである,卵巣組織凍結・融解移植は20年の技術である。我々は現在新しい卵巣組織凍結デバイスとなる閉鎖型デバイスの開発に取り組んでおり,ホルモン値以外での卵巣の生理学的評価として,透過型電子顕微鏡を使用した卵巣組織評価に着目し本研究を実施した。
方法:麻酔導入後のカニクイザルを開腹した後,両側の卵巣を切除し,閉鎖型卵巣組織凍結デバイスを用いて超急速冷凍法(vitrification法)によって3時間以上液体窒素中に凍結保存した。この組織を融解後,大網や卵管間膜へ移植した。移植後の月経周期回復を確認した後,採卵のため卵巣刺激を実施し,移植した卵巣組織(大網ならびに卵管間膜)から卵子を採取し,卵巣組織および獲得した卵子をそれぞれ電子顕微鏡にて評価をした。
結果:透過型電子顕微鏡で卵巣融解後,大網移植後および卵管間膜移植後の卵巣組織を評価した結果,融解直後では卵巣組織の間質部分に間隙を認めた。また融解卵巣の移植後から時間が経過することで,その間隙が修復されるなどの卵巣組織の変化を確認することができた。透過型電子顕微鏡で細胞成分の確認ができなかった卵管間膜へ移植した卵巣組織からは卵子を獲得することができなかった。
考察:透過型電子顕微鏡による卵巣組織凍結後の組織評価により,新たに開発した卵巣組織凍結閉鎖型デバイスの有効性が示唆された。

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© 2017 聖マリアンナ医科大学医学会
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