聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
肺炎球菌20型による髄膜炎をきたした急性副鼻腔炎の1例
森 剛史慶野 大伴 さとみ都築 慶光勝田 友博曽根田 瞬山本 仁
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2017 年 45 巻 3 号 p. 227-232

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抄録

急性副鼻腔炎の合併症には頭蓋内合併症 (硬膜下膿瘍,硬膜外膿瘍,髄膜炎,脳膿瘍,海綿静脈洞血栓症) と眼窩内合併症 (眼窩蜂窩織炎,眼窩骨膜下膿瘍) が知られている。今回,われわれは前頭洞炎から細菌性髄膜炎を発症した症例を経験したので報告する。症例は13歳の女子。発熱を伴う頭痛,複視を主訴に前医を受診し,血液検査で炎症反応の上昇を認めたため,当科に紹介となった。軽度の項部硬直を認め,頭部CT 検査と髄液検査から細菌性髄膜炎,硬膜下膿瘍と診断した。髄液のグラム染色でグラム陽性球菌を認めたため,セフトリアキソンとバンコマイシンを開始し,第3病日に髄液と血液培養から肺炎球菌が分離されたため,感受性をもとにアンピシリンに変更した。第21病日に頭部MRI 検査で円蓋部に半円形の硬膜下膿瘍を認め,同部位の圧迫による右上肢のしびれが出現したため,第23病日に穿頭膿瘍ドレナージ術を行った。抗菌薬は計6週間投与し,神経学的後遺症なく退院した。最終培養にて肺炎球菌の血清型は20型と報告された。急性副鼻腔炎の頭蓋内合併症は神経学的後遺症を残す恐れや致死的になる可能性があり,早期の診断と治療が必要である。

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© 2017 聖マリアンナ医科大学医学会
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