2018 年 46 巻 2 号 p. 63-68
ヒトパレコウィルス3(Human Parecho Virus,以下HPeV)は乳幼児の敗血症症候群や中枢神経感染症を起こすウィルスとして知られているが,学童のHPeV3による辺縁系脳炎の報告はない。今回我々はマイコプラズマ感染経過中に急性脳炎を発症し,髄液PCRによりパレコウイルス辺縁系脳炎と診断した一例を経験した。
マイコプラズマ感染経過中に発熱と嘔吐,異常行動を主訴に受診した9歳,女児。意識障害の進行を呈し,髄液検査で細胞数軽度上昇,脳波で持続的な広汎性の高振幅δ波,頭部MRI拡散強調画像で大脳皮質の異常高信号を認めたため,急性脳炎と診断した。ステロイドパルス療法を2回施行するとともにγグロブリン療法,バンコマイシン,セフォタキシム,アシクロビルの投与を開始し,第10病日までに意識障害は改善した。
第17病日に髄液PCRにてHPeV3が陽性と判明し,血液・髄液共にグルタミン酸受容体抗体の上昇を認めた。以上より,HPeV3感染による非ヘルペス性急性辺縁系脳炎と診断した。学童期のHPeVによる辺縁系脳炎の報告はなく,また本症例では記憶や学習に深く関わるグルタミン酸受容体に対する抗体の上昇を認め,記憶や知的障害などの後遺症に関して注意深い経過観察が必要である。