聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
乳幼児のMRI検査における鎮静薬の有用性と安全性
加久 翔太朗水口 浩一阪井 裕一山本 仁
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2019 年 46 巻 4 号 p. 231-237

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抄録

体動を自制することが困難な小児のMRI検査では鎮静が必要となるが,鎮静薬の選択に関する標準的なプロトコルはないのが現状である。我々は本邦で多く使用されているトリクロホスを用いた鎮静プロトコルを作成し,有効性と安全性について評価した。2014年10月から2017年3月の間に行った。生後1か月以上7歳未満の鎮静のリスクが低い患者に対する予定MRI検査について後方視的に検討した。トリクロホス60〜80 mg/kgを内服させ,鎮静が不十分な場合にはミダゾラム,ヒドロキシジン,ペンタゾシンを静脈注射で追加した。検討対象は225例(月齢中央値7か月)あり,そのうち223例(99.1%)で鎮静下に検査を完遂できた。この223例のトリクロホス投与量の中央値は68.2 mg/kgであった。トリクロホス単剤で鎮静された群は152例(68.2%),複数薬剤を要した群は71例(31.8%)であった。月齢の中央値,トリクロホス投与量の中央値,平均鎮静時間,有害事象数は,いずれも複数薬剤を要した群で有意に高かった。トリクロホス単剤で鎮静できたカットオフ月齢は16か月であった。複数薬剤を要した群は年長の傾向にあり,鎮静時間の遷延,有害事象の増多を招いたことから,月齢に応じた薬剤選択,撮像体制の構築が,安全性や成功率の観点から必要である。

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© 2019 聖マリアンナ医科大学医学会
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