聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
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46 巻, 4 号
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原著
  • 加久 翔太朗, 水口 浩一, 阪井 裕一, 山本 仁
    2019 年 46 巻 4 号 p. 231-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    体動を自制することが困難な小児のMRI検査では鎮静が必要となるが,鎮静薬の選択に関する標準的なプロトコルはないのが現状である。我々は本邦で多く使用されているトリクロホスを用いた鎮静プロトコルを作成し,有効性と安全性について評価した。2014年10月から2017年3月の間に行った。生後1か月以上7歳未満の鎮静のリスクが低い患者に対する予定MRI検査について後方視的に検討した。トリクロホス60〜80 mg/kgを内服させ,鎮静が不十分な場合にはミダゾラム,ヒドロキシジン,ペンタゾシンを静脈注射で追加した。検討対象は225例(月齢中央値7か月)あり,そのうち223例(99.1%)で鎮静下に検査を完遂できた。この223例のトリクロホス投与量の中央値は68.2 mg/kgであった。トリクロホス単剤で鎮静された群は152例(68.2%),複数薬剤を要した群は71例(31.8%)であった。月齢の中央値,トリクロホス投与量の中央値,平均鎮静時間,有害事象数は,いずれも複数薬剤を要した群で有意に高かった。トリクロホス単剤で鎮静できたカットオフ月齢は16か月であった。複数薬剤を要した群は年長の傾向にあり,鎮静時間の遷延,有害事象の増多を招いたことから,月齢に応じた薬剤選択,撮像体制の構築が,安全性や成功率の観点から必要である。

  • 藤井 亮爾, 小松 梨恵, 仁木 久照, 遊道 和雄
    2019 年 46 巻 4 号 p. 239-247
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/25
    ジャーナル フリー

    滑膜細胞の異常増殖は関節リウマチ(RA)病態の主座の1つであるにもかかわらず,そのメカニズムには不明な点が多い。本研究ではRA滑膜線維芽細胞において炎症性サイトカインで誘導される細胞周期因子を同定するため,定量的リアルタイムPCR法を用いて遺伝子発現解析を行った。その結果,関節リウマチまたは変形性関節症患者由来の滑膜線維芽細胞においてインターロイキン(IL)6ではなく,tumor necrosis factor(TNF)αやIL-1βがG1期の細胞周期制御因子であるcyclin-dependent kinase(CDK)6の遺伝子発現を増強した。TNFα刺激によるCDK6遺伝子発現は,NFκBやAP1経路を介して誘導された。さらにTNFαで刺激したRA滑膜線維芽細胞の増殖は,サイクリンDのパートナーであるCDK6やCDK4のsiRNAにより抑制された。RA滑膜線維芽細胞においてCDK6の遺伝子発現は,TNFαによりNFκBやAP1経路を介して誘導される。CDK6の分子標的薬は,RA滑膜増殖を抑制し,炎症を鎮静化する可能性が期待される。

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