滑膜細胞の異常増殖は関節リウマチ(RA)病態の主座の1つであるにもかかわらず,そのメカニズムには不明な点が多い。本研究ではRA滑膜線維芽細胞において炎症性サイトカインで誘導される細胞周期因子を同定するため,定量的リアルタイムPCR法を用いて遺伝子発現解析を行った。その結果,関節リウマチまたは変形性関節症患者由来の滑膜線維芽細胞においてインターロイキン(IL)6ではなく,tumor necrosis factor(TNF)αやIL-1βがG1期の細胞周期制御因子であるcyclin-dependent kinase(CDK)6の遺伝子発現を増強した。TNFα刺激によるCDK6遺伝子発現は,NFκBやAP1経路を介して誘導された。さらにTNFαで刺激したRA滑膜線維芽細胞の増殖は,サイクリンDのパートナーであるCDK6やCDK4のsiRNAにより抑制された。RA滑膜線維芽細胞においてCDK6の遺伝子発現は,TNFαによりNFκBやAP1経路を介して誘導される。CDK6の分子標的薬は,RA滑膜増殖を抑制し,炎症を鎮静化する可能性が期待される。