聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
ビスマスシールドを用いた水晶体被ばく低減時の頭部CT画質評価
藤川 あつ子中村 尚生小川 泰良
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2020 年 47 巻 4 号 p. 167-174

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抄録

目的 頭部CT検査時に生ずる水晶体被ばく低減のために,ビスマス製防護シールドが有用であることが知られているが,この使用方法により画像に生じる影響の程度は異なる。今回,当院で行ったファントム実験での検証に引き続き,臨床画像でその画質低下の程度について,前向き研究を行い,画像診断の障害とならないことを証明する。
方法 当院で過去に頭部CT検査施行歴のある50症例に対し,ビスマス製防護シールドを用い同一条件で頭部CT検査を施行した。シールドあり,なし群の,画質評価として22箇所のCT値とノイズ計測を行った。視角評価として2名の放射線科専門医で各群の画質を採点した。これら結果に対し2群間の統計学的有意差検定を行った。
結果 13例はシールド以外の原因による画質劣化が高度のため除外し37例を検討した。CT値は3箇所を除き,シールドあり群と有意な差があったが,その差異は眼球以外では微小であった。画像ノイズは5箇所で有意差が見られたが,その差は1SD未満であった。視覚評価はシールドあり群で眼球の画質低下が有意に見られたが,その他には影響を認めなかった。
考察・結論 CT検査機器の機能向上によりCT管球傾斜で眼球照射を避ける方法や,眼球の存在する前方側からの照射を低下させるなどで水晶体被ばく低減は実現されているが,すべての機器で可能となるまでは時間もかかる。今回結果では眼球を除いて有意な画質低下は来たしておらずビスマスシールドはまだ意義があると考える。

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© 2020 聖マリアンナ医科大学医学会
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