聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
内分泌負荷試験後1週間して診断し得た下垂体卒中の一例
浅井 志高松葉 怜大槻 拓矢酒井 翼酒井 健輔田中 逸
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2020 年 47 巻 4 号 p. 181-188

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抄録

82歳男性。既往に心筋梗塞と糖尿病があり。めまい精査に行った頭部MRIで下垂体腫瘍を指摘。ホルモン基礎値では,甲状腺刺激ホルモン:2.759 μIU/mL,遊離サイロキシン:0.73 ng/dLと中枢性甲状腺機能低下症が疑われたが,その他の下垂体前葉ホルモン値は正常範囲。また低Na血症:123 mEq/mLがあり,続発性副腎皮質機能低下症も否定できず,下垂体前葉機能評価目的で,甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(250 μg),副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(100 mg),成長ホルモン放出ペプチド-2(100 μg)負荷試験をそれぞれ別日に施行。汎下垂体機能低下症と診断し,ホルモン補充療法を開始。最終負荷試験7日後に突然の頭痛を自覚し来院。眼球運動障害や意識障害はなく,緊急頭部CTおよび下垂体MRIでも下垂体卒中(PA)を疑う所見はなかった。しかし,頭痛の継続のため,翌日に再度MRIを施行。T1強調像で腫瘍内部に高信号を認め,PAと診断した。PAの誘因の一つとして負荷試験が挙げられるが,多くは負荷後2日以内で,それ以降の発症は稀である。本例は他の要因も否定できないが,最終負荷試験7日後にPAを発症しており,負荷試験後1週間は注意を要す。

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© 2020 聖マリアンナ医科大学医学会
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