聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔による帝王切開術後に頭蓋内硬膜下血腫を生じた一例
玉城 ゆり子中山 知沙香奥田 紘隆大井 智高木 摩衣野村 浩清杉山 泰朗杉 毬那山浦 綾子佐藤 未祐奈井上 莊一郎
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2021 年 49 巻 2 号 p. 49-54

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抄録

症例は妊娠39週0日,36歳の女性。子宮筋腫合併のため,帝王切開術が予定された。既往歴はなく,術前検査に異常はなかった。麻酔は脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔で行い,異常なく手術は終了した。術後3日目,立位時に増強する頭痛が出現したため,硬膜穿刺後頭痛と診断し,鎮痛薬を処方し,1日2 L程度の飲水を促した。しかし,改善しないため,硬膜外自家血注入を提案したが,本人が拒否したため実施しなかった。頭痛は継続していたが改善傾向で,歩行可能であったため,術後8日目に退院した。術後10日目,患者は自宅で嘔吐,失禁し,瞳孔不同のため,当院に救急搬送された。来院時,意識レベルの低下があり,頭部造影CT検査で右から左への正中偏位を伴う硬膜下血腫が認められ,同日に緊急開頭血腫除去術が施行された。血腫除去術後,意識レベルは改善したものの,頭痛は残存し,血腫増大の懸念があったため,血腫除去2日後に硬膜外自家血注入を実施した。以後,頭痛は改善し,血腫量も減少したため,患者は血腫除去13日後に後遺症なく退院した。脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔施行後の頭蓋内硬膜下血腫の発症は稀ではあるが,報告されている。早期診断が予後を左右する合併症であるため,脊髄くも膜下麻酔後の頭痛では,その性状に注意し,変化が生じた場合には,頭蓋内硬膜下血腫の可能性を考慮し,早急に精査を行う必要がある。

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© 2021 聖マリアンナ医科大学医学会
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