2022 年 50 巻 2 号 p. 47-54
背景:BRCA1/2病的バリアント陽性の乳癌発症者における対側リスク低減乳房切除術(contralateral risk-reduction mastectomy: CRRM)は,本邦では2020年4月に保険適用となった。しかしCRRM検体の病理評価方法は統一されていない。今回,術前画像評価と術後病理結果を対比し潜在性乳癌の発見率とCRRM検体の病理評価方法について検討した。
方法:2015年から2020年までに当院でCRRMを行なった症例7例を対象とした。CRRM検体は10 mmスライスの全割標本とし,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色による組織検索を行った。さらにp53,Ki-67の免疫組織化学的評価を行った。
結果:CRRM症例全例に術前画像評価では悪性を疑う所見は指摘されていなかった。CRRM検体のHE染色では1例に乳管内増殖性病変,1例に線維腺腫を認めたが,全症例の全ての切片に浸潤癌,非浸潤性乳管癌および前癌病変は認めなかった。p53及びKi-67免疫組織化学検査の結果はBRCA1/2病的バリアントの有無で有意な差は認めなかった。
考察:我々の研究では,CRRM検体の全割標本での病理評価において潜在性乳癌を認めなかった。この結果は質の高い画像評価を行うことの重要性を示すとともに,CRRM検体に対する病理評価方法の簡略化を支持する結果になると考えられた。