聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
M1WT3培養細胞を用いたラジオレセプターアッセイ系で測定した抗精神病薬の抗コリン活性
小西 公子芳賀 俊明袖長 光知穂蜂須 貢
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2022 年 50 巻 3 号 p. 69-76

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抄録

緒言:抗コリン薬は長期使用により,認知機能やフレイル,肺炎の悪化が懸念されるが,先行研究における抗コリン作用強度には諸説あり薬剤選択に迷う。そこで我々が新たに確立した方法を用いて抗精神病薬の抗コリン作用を評価することを目的とした。

方法:我々はNobregaらのムスカリン(M)受容体サブタイプ1を発現させたM1WT3細胞を用いたラジオレセプターバインディングアッセイ法のシンチレターを液体から固体に変更する方法を確立した。この方法を用いて抗コリン作用強度の相違が散見されるクロルプロマジン,クロザピン,ペルフェナジン,ピモジド,フルフェナジン,オランザピンに加え近年,精神科領域で使用頻度の高いアリピプラゾール,リスペリドンの抗コリン作用を測定・評価した。薬物の有効血中濃度はインタビューフォーム等より判断した。

結果:IC50(half maximal(50%)inhibitory concentration:50%阻害濃度)値はクロザピン0.028±0.007 μMが最も抗コリン作用が強く,次いでクロルプロマジン0.149±0.001 μM,オランザピン0.382±0.195 μM,ペルフェナジン6.780±1.310 μM,ピモジド7.250±3.510 μM,フルフェナジン8.950±3.150 μM,リスペリドン10.638±7.054 M,アリピプラゾール28.440±4.520 μMであった。

結論:アリピプラゾールは,抗コリン作用が低く安全な薬物であると評価できた。M1WT3細胞を用いたラジオレセプターバインディングアッセイによる抗精神病薬の抗コリン活性の評価は,副作用発現のモニタリングとして有用な可能性がある。

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