聖マリアンナ医科大学雑誌
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雑報
新型コロナウイルス感染後の精神医学的後遺症
小口 芳世
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2024 年 51 巻 Suppl 号 p. S181-S184

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抄録

COVID-19感染は精神医学においても多面的な影響を与えている。本論文では,その精神医療への影響について総合的に調査し,3つの主要な症状群を識別した。第1に適応障害に類似した症状が確認され,対象とした症例は,中等度の不安,抑うつ,睡眠障害を呈していた。第2にCOVID-19後遺症として慢性疲労症候群(ME/CFS)が明瞭に認められるケースがあった。特に,介護福祉士である40歳女性症例は,COVID-19感染後,持続する倦怠感や身体不調に悩まされていた。第3に内因性精神病の再発症例も確認された。さらに,COVID-19後遺症としてしばしば報告される「Brain Fog」に対する治療アプローチとして,反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)が一定の効果を示しているが,その有効性にはさらなるエビデンスが必要である。特にME/CFSやBrain Fogには根本的な治療法が未確立であり,対症療法と精神療法的アプローチが主体である。治療の脱落率や時間的要因も考慮に入れ,継続的な研究と症例蓄積が必要である。COVID-19パンデミックが始まって4年以上経過した現在でも,新たな症例とその治療法の開発が急募されている。症状の遷延や軽快を伴う症例を蓄積し,その背景要因を解析することが,今後の治療戦略の確立に不可欠である。本研究はその一環として,COVID-19と精神医療との相互作用に新たな視点を提供する。

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© 2024 聖マリアンナ医科大学医学会
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