聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
Print ISSN : 0387-2289
ISSN-L : 0387-2289
総説
新型コロナウイルス感染症後外来における上咽頭擦過療法の治療介入
齋藤 善光 岩武 桜子赤羽 邦彬多村 悠紀山田 善宥小森 学
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 51 巻 Suppl 号 p. S185-S191

詳細
抄録

新型コロナウイルス感染症は2019年12月に報告され,全世界に猛威を振るったが,ワクチンを含めた予防や感染対策,治療法の解明により,本邦では5類感染症へ移行され通常診療での対応が可能となった。今後も感染者数の増減を繰り返す事は想定されリスクを伴う状況に変化はないが,同時に問題となるのが,罹患後のコロナ後遺症である。

後遺症の発症要因は上咽頭との関連性が指摘されており,炎症が上咽頭に継続することで慢性上咽頭炎が併発する可能性がある為,その治療法である上咽頭擦過療法(EAT)の有効性が報告されている。以上から当科ではEATを積極的に導入し,より明視下に行うため,鼻咽腔内視鏡を用いた内視鏡下上咽頭擦過療法にて,的確な処置と患者との画像共有を心がけて実施している。自覚症状アンケートを用いた当科でのEAT治療成績は,EAT施行前後で全てのアンケート項目で有意に自覚症状の改善を認め,改善率では1割以上の自覚症状が改善した症例は82%,7割以上改善した症例は28% 存在し,完治した症例も6% 認められた。また,EAT導入早期より症状は改善し,継続施行にてさらに改善する傾向が得られた。以上からコロナ後遺症に対するEATはある一定の治療効果を示す可能性が示唆されたが,未だエビデンスレベルの低い治療法で,完治症例が少ない事も実状である為,今後より効果的な新たな治療法が解明されることを期待したい。

著者関連情報
© 2024 聖マリアンナ医科大学医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top