抄録
進行舌癌の広範囲切除・再建後の構音障害および嚥下障害は, 患者が社会復帰するにあたり重要な問題である. 1995年以降当科で加療した進行舌癌根治手術症例25例について術後会話機能および嚥下機能の検討を行った. 当院では基本的に一期的な輪状咽頭筋切断術あるいは喉頭挙上術は施行していなかった. 舌尖部に切除断端が及んだ症例では有意に会話機能が低下した. 舌根部の切除範囲の拡大とともに嚥下機能が低下し, 舌根を50%以上切除すると年齢と関係なく術後経管栄養から離脱できない症例があった. これらの症例に嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査による診断を行い, 輪状咽頭筋切断術あるいは喉頭挙上術を行うことにより, 嚥下障害の改善を認めた. 術後の嚥下機能障害に対する適切な診断と, 外科的治療を含めた治療方針の選択が重要であることが示唆された. また舌根を50%以上切除する症例において, 一期的な喉頭挙上術および輪状咽頭筋切断術の併用が重要であることが示唆された.