抄録
我々が構築した, Weerda型やFK型の拡張型喉頭鏡, ハイビジョン喉頭硬性内視鏡, 細径腹腔鏡手術用電気メスや鉗子を組み合わせた新たな手術環境により, 気管切開や頸部外切開をせずに, 経口的に下咽頭癌や声門上癌の一塊切除が可能になった.
適応は, 下咽頭癌, 声門上癌のT1, T2, 一部のT3病変で, 今までに45例 (新鮮例34例, 照射後救済例および他癌による頸部既照射例10例, 下咽頭部分切除後再発1例) に本手術を施行した. 頸部転移を有する症例には頸部郭清術を, 頸部多発リンパ節転移例や断端陽性例には術後照射を施行した. 5年疾患特異的生存率, 粗生存率, 喉頭温存率はそれぞれ83%, 70%, 89%で, 術後経口摂取開始までの日数は平均6日, 術後全粥食が摂取可能になるまでの日数は平均9.5日で, 最終的には全例で常食摂取が可能となった.
我々が開発した新しい手術環境で行う経口的咽喉頭部分切除術は, 安全に施行可能で, 治療成績や術後機能も満足できるものであり, 下咽頭癌・声門上癌に対する新しい低侵襲的治療の選択肢になるもの考えている. 本稿では手術手技を具体的に解説する.