2013 年 26 巻 2 号 p. 111-117
深頸部膿瘍は口腔, 口蓋扁桃, 歯牙などが主たる感染源となり頸部間隙内に炎症が波及することにより生じる. 多くの場合は切開排膿を中心とした外科的治療が行われるが, 近年の高齢化社会により, 本疾患に対して高齢者の手術例が増加するものと考えられる. 当科にて入院加療を行った深頸部膿瘍症例54例について, 75歳以上を高齢者とし75歳未満症例との比較検討を行った. 深頸部膿瘍症例75歳以上の高齢者においては, 本人の自覚以上に, 局所および全身炎症症状が進行している症例が多く, 術前合併症が多く認めることにより術後合併症を誘導していることが示唆された. また, 術後合併症としてせん妄が多く, 術後せん妄に留意する必要があり, 循環器疾患, 呼吸器疾患などの対策も重要と考えられた.