口腔・咽頭科
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総 説
唾液腺悪性腫瘍の分子病理から見た治療法の展望
青井 典明川内 秀之
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キーワード: 唾液腺癌, Ki-67, 分子標的薬
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2017 年 30 巻 2 号 p. 149-154

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抄録

  唾液腺癌に対する治療は手術加療が基本であり, 高悪性癌症例において術後治療として放射線治療が適応となる. 唾液腺癌は比較的まれであり, 数多くの組織型およびその亜型が存在するため, 追加治療を考慮するためには, 腫瘍ごとに悪性度の評価が必要となる. 乳癌領域と同様に, 腫瘍の増殖能を示す Ki-67 labeling index は唾液腺癌でも予後との関連が報告されており, 悪性度を示す有用なマーカーと考えられるが, 腫瘍内の Ki-67 染色の heterogeneity のため, 再現性に乏しくカットオフ値については今後の検討が必要である. 切除不能な遠隔転移を生じた場合の選択肢の一つに分子標的薬の可能性がある. 現在頭頸部癌領域に使用可能な分子標的薬はセツキシマブのみであり, その標的分子である EGFR は組織型を問わず多くの症例で発現している. 他領域で使用されるトラスツズマブについて, その標的分子である HER2 は発現する組織型が限られてくるが, いずれも他の抗悪性腫瘍薬との併用にて有効であった報告が散見される. 抗アンドロゲン剤は唾液腺導管癌において単剤で有効であった報告がある. 今後の症例の蓄積に期待するところである.

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© 2017 日本口腔・咽頭科学会
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