耳下腺内に発生した顔面神経鞘腫は比較的稀な腫瘍であり，整容面などの観点から経過観察の方針とすることも多く手術機会は少ない．これまでに我々は本腫瘍に対し被膜間摘出術を行ってきたが，永続性の顔面神経麻痺を生じる症例も経験するようになったため，この原因を明らかにする目的でリスク因子を検討したので報告する．
対象は2013年～2019年までの６年間に当センターで耳下腺内に発生した顔面神経鞘腫に対し被膜間摘出術を施行した7例とした．
検討項目は，年齢，性別，腫瘍の最大径，腫瘍の形状，腫瘍内部の性状，術中の腫瘍の位置，術前後の顔面神経麻痺とした．
結果は，突出型，充実型，本幹型は永続性麻痺の発生率が高くリスク因子と考えられ，本幹型と充実型かつ突出型は特にリスクが高いと考えられた．平坦型，充実＋嚢胞型，末梢型は，永続性麻痺のリスクは比較的低いと考えられた．症例ごとにリスク因子を検討することで，治療方針決定や患者へのインフォームドコンセントに役立つと考えられた．
