口腔・咽頭科
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ヒト口蓋扁桃リンパ球のマウスへの移植の試み: NOD-scidマウスを用いた検討
川内 秀之佐野 啓介柴 宏巳石光 亮太郎三島 清司
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1998 年 10 巻 2 号 p. 149-160

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抄録

免疫不全マウスであるNOD/LtSz-scid/scid (NOD-scid) マウスヘヒトロ蓋扁桃リンパ球を移入し, in vivoでのヒト口蓋扁桃リンパ球の動態を見るための実験モデルになりうるかどうかについて検討した。その結果, 移入後1カ月の時点での検討で、従来用いられていたCB-17 scidマウスでは, 腹腔内に投与したヒト口蓋扁桃リンパ球の生着が全例において認められなかったが, 一方, NOD-scidマウスでは, 50%以上の確率で生着が認められた.さらに, 扁桃ぬぐい液の細菌検査でα溶連菌が検出された患者より採取したヒト口蓋扁桃リンパ球が生着したNOD-scidマウスにおいては, 血清中にα溶連菌由来のM蛋白に対する特異的ヒトIgG抗体活性さらにはIgA抗体活性も検出された.
これらのNOD-scidマウスに点鼻により, M蛋白とコレラトキシンで経鼻的に感作を行ったところ, 鼻洗浄液中にM蛋白特異的IgA抗体価の上昇を認めた.さらに, 免疫組織染色を行ったところ, 抗原刺激を加えていない鼻粘膜さらには耳管や中耳の粘膜にはヒト由来のT細胞やB細胞は認められなかった.一方, 点鼻感作を行ったNOD-scidマウスの鼻粘膜にはnasopharyngeal associated lymphoreticular tissue (NALT) やNALT周辺の鼻粘膜下にヒト白血球の動員が見られ, ヒトTリンパ球やBリンパ球も散見された.これらの結果より, 本実験モデルが, ヒト口蓋扁桃リンパ球の共通粘膜免疫系組織への帰趨や粘膜免疫実効部位でのこれらの細胞の分化増殖をin vivoで動的に解析する上で, 有益なモデルになりうることが示唆された.

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