琉球諸島南部の仲ノ神島および西表島において,1999 年5 月から11 月にかけて,オジロワシHaliaeetus albicilla の若鳥を合計25 回観察した.いずれも両翼の初列風切の数枚が脱落しており,同一個体と判断され,琉球諸島における本種の初越夏記録となった.本個体は,海鳥類6 種が繁殖する仲ノ神島や西表島周辺のアジサシ類2 種の繁殖地に頻繁に飛来し,旋回帆翔,急接近や着陸,採餌群への急降下などの行動を繰り返した.仲ノ神島では胸部や腹部を捕食されたカツオドリSula leucogaster やセグロアジサシSterna fuscata の死体が散見された.また西表島周辺のアジサシ類繁殖地では,親鳥による抱卵の一斉放棄がみられ,長期滞在した本個体が,繁殖海鳥類に直接的・間接的な影響を及ぼしたものと推察された.