2015 年 31 巻 p. 113-123
日本の亜高山帯ではホシガラスはハイマツの種子を貯食するが,富士山にはハイマツが分布しない.富士山北西斜面においてホシガラスが何を貯食しているのかを明らかにするために,本研究ではホシガラスの貯食行動と飛翔距離を調査した.その結果,富士山のホシガラスは8 月下旬から11 月下旬にかけてゴヨウマツの種子を貯食していることがわかった.富士山ではゴヨウマツは山地帯から亜高山帯に点在しており,貯食のために飛翔する距離は直線距離で最長10.5km と推定された.本研究により,富士山のホシガラスは低標高から高標高へ種子を運ぶという点で,ハイマツ帯のホシガラスとは異なる貯食行動をおこなっていることが明らかになった.