江戸時代は様々な分野で技術革新が図られ,水管理技術についてみても,すぐれた発想や技術に基づいた水管理が行われた時代であった。例えば,成富兵庫の嘉瀬川治水システム,伊奈氏の利根川東遷事業などは流域スケールからのすぐれた治水システムであったし,吉野川など各地で行われた水害防備林による治水は特筆でき,現在でも機能している。上水では玉川上水や神田上水が完成され,江戸の給水人口は世界最大となったほか,下水道整備やリサイクル(古着,排泄物など)も行われた。また,埋め立てによるデルタ造成等に伴う新田開発も盛んに行われ,石高も倍増した。このように,当時の水害,治水技術,洪水対応技術などをはじめとする江戸時代のすぐれた水管理技術を調べて,水管理に関する経験や実績より,現代でも有効な考え方や技術を整理・分析した。