水利科学
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一般論文
北陸地方4ダムにおける利水運用の実態分析に基づく下流河川生態系改善案
松井 明
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2018 年 62 巻 3 号 p. 71-82

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抄録

北陸地方4ダム(手取川ダム・真名川ダム・大石ダム・大津呂ダム)の共通点はすべて洪水調節を利水目的の1つとしているため,洪水期および融雪期の前後に貯水量が減少した。総貯水容量が比較的大きい手取川ダム,真名川ダムは,小さい大石ダム,大津呂ダムと比較して,放流量が流入量を上回る月が多かった。総貯水容量が大きいダムは渇水に対する危険性が小さいため,放流量が増加した。年平均回転率は大きいものから順に大石ダム14.5回,手取川ダム5.2回,大津呂ダム4.7回および真名川ダム3.1回であった。真名川ダムおよび大津呂ダムは総貯水容量に対する年平均流入量が小さいため,年平均回転率が小さくなった。大石ダム下流河川生態系を改善するためには,①現行の表層取水から選択取水に変更すること,②麦わらや落葉落枝を利用すること,③4月に放流量を増加させて自然出水再現放流すること,④流入量を一時的に蓄えることによって規模の大きいフラッシュ放流を実施することを提案した。大石ダムは建設後約40年間が経過する。治水や利水施設としてだけでなく,下流河川生態系を保全する施設として適切に維持管理されることが求められる。

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© 2018 一般社団法人 日本治山治水協会
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