わが国で発生した山地荒廃の中には,細粒な表層物質の特性に起因する事例が多く見られる。近世期に西日本から中部地方で発生したハゲ山荒廃の多くは,花崗岩の風化物質で侵食を受けやすいマサ土の分布域で発生している。また,北上山地や襟裳岬で発生した風食による荒廃には凍上しやすい火山灰土の性質が大きく影響している。いずれの荒廃現象も脆弱な表層物質が森林土壌による保護を失い侵食が発生したために起きた現象である。このような脆弱な表層物質の分布情報は既存の地質図や土壌図には記載されていないが,それらの成因を考慮した地理情報の解析や,火山灰分布図からある程度推定できる。さらに,荒廃の誘因の指標となる気候値と組み合わせることで山地荒廃のリスクを事前に予測できる可能性がある。このような地理情報を活用した荒廃リスクの事前予測も今後の治山技術の重要な課題と考えられる。