2021 年 65 巻 5 号 p. 31-39
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震直後の8日間で,茨城県内で震度が6弱と観測された地域にある山地小流域で流出量が1.56~1.70mm増加し,地下水位が約1m低下した。この流域の流出量と地下水位の関係を地震前後のそれぞれ1年間で比較したところ,地震により地下水由来の水が流出しやすくなる変化が生じたと考えられた。しかし地震直後の増水量は多くなく,小流域面積のせいぜい1.5%程度の面積での地下水位低下でまかなえるものと計算された。そのため地下水位の低下は,小流域内の極めて限られた範囲での現象であったと考えられた。その一方で,この小流域の下流地点における増水量の水高換算値は,この小流域における値とほぼ等しかった。そのため周辺にある他の小流域でも,地下水位の低下が観測された小流域と同様に,地震直後に流出量が増加したと考えられる。