2006 年 21 巻 4 号 p. 333-338
症例は70歳の男性.2003年6月,高血圧にて通院中の近医で初めて肝機能異常を指摘された.精査にて膵頭部癌による閉塞性黄疸の診断で当院を紹介された.膵頭部の35 mm大の浸潤性膵管癌に対して,同8月に膵頭十二指腸切除術を施行し,組織診断は高分化型管状腺癌,T4(PV)N0, Stage IVaであった.その後,2004年5月頃からCEA,CA19-9が漸増し,画像診断にて精査を繰り返し,残膵の主膵管拡張が指摘されていた.その後も腫瘍マーカーの漸増は続き,2005年5月のCTにて初めて残膵の腫瘤を指摘され,残膵に発生したIPMT由来浸潤癌の診断にて同7月6日残膵摘出術を施行した.組織診断は高~中分化型管状腺癌,T4(PL)N0,Stage IVaであった.膵癌根治切除後の残膵に異時性多発性に第二癌が発見され,さらに根治的に切除されることは極めて稀である.