膵臓
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原著
ウリナスタチン加フィブリン糊を用いた尾側膵切除後膵液漏防止の試み
松田 正道渡邊 五朗橋本 雅司
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2006 年 21 巻 4 号 p. 329-332

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抄録

プロテアーゼインヒビターであるウリナスタチン(Ulinastatin;以下UTI)10万単位を混じたフィブリン糊(以下UTI―fibrin糊)3 mLで尾側膵切離後の断端を被包し,膵液漏発生を抑制しうるかを検討した.当科で,プロキシメイト・リニアステイプラー(TL60/TLH60)を用いて尾側膵切除を施行した73例を対象とし,UTI―fibrin糊群38例,UTI―fibrin糊非使用群(以下非使用群)35例における膵液瘻の発生頻度を検討した.膵液瘻発生はUTI―fibrin糊群5/38(13.2%),非使用群13/35(37.1%)であり,UTI―fibrin糊群で有意に低下した.今回の検討から,TL/TLHによる膵断端処理に加え,フィブリン糊による膵切離面のsealingとUTIによる局所での膵酵素活性阻害により,膵液瘻発生が抑制されうると考えられた.しかし今回の検討は前向きのランダム化試験ではないこと,またフィブリン糊がUTIの徐放効果を有するのか,UTIに局所作用はあるのか,といった問題点があり,今後の検討を要する.

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© 2006 日本膵臓学会
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