膵臓
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総説
自己免疫性膵炎―最近の話題―
神澤 輝実
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2006 年 21 巻 5 号 p. 398-403

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抄録

自己免疫性膵炎に関する最近の3つの話題を中心に述べる.第1は今年発表された自己免疫性膵炎診断基準の改訂案である.日本膵臓学会では2002年に自己免疫性膵炎診断基準を作成したが,その後再検討を加え,より多くの症例を診断できるように,主膵管狭細像の範囲の規定を除き,血清IgG4高値を加えた新基準を厚生労働省難治性膵疾患調査研究班と合同で2006年に報告した.第2は,最近欧米で報告されている,本邦で認知されているものとは異なる病態の自己免疫性膵炎である.通常の自己免疫性膵炎の膵臓の病理組織像は,密なリンパ球とIgG4陽性の形質細胞の浸潤と線維化(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP))を特徴とするが,欧米で報告されている膵臓に好中球の浸潤を認める例は,発症年齢が若く,男女差がなく,炎症性腸疾患の合併が多いなど,本邦の自己免疫性膵炎と異なる臨床像を呈しており,今後の検討が必要である.第3は,自己免疫性膵炎の膵臓にみられる特異的炎症性変化は,後腹膜,胆道系,唾液腺などにも認められることより,自己免疫性膵炎はIgG4が関連した全身性疾患(IgG4関連硬化性疾患)の膵病変で,その膵外病変はこの全身性疾患の諸臓器病変の1つであるとする考え方である.

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© 2006 日本膵臓学会
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