2009 年 24 巻 4 号 p. 521-526
症例は70歳,男性.上腹部不快感にて当科受診.血液検査所見上,肝胆道系酵素上昇,CA19-9高値.US,CT上,膵尾部に40mm大の乏血性,脾動静脈浸潤疑われる腫瘍と多発肝腫瘍が認められた.ERP上主膵管は体尾部で狭窄しており,膵尾部癌,多発肝転移の診断となった.右外眼角皮膚腫瘍(腺癌),大腸癌,前立腺癌の既往があり,いずれも切除されている.右外眼角皮膚腫瘍は病理組織上,大腸癌,前立腺癌との類似性は少なく,経皮的肝腫瘍生検の組織と類似性を有しており,免疫組織化学染色の結果も合わせ,膵癌の皮膚転移と考えられた.膵癌,多発肝転移に対しては,gemcitabineによる化学療法を開始した.内臓癌の皮膚転移は比較的稀であり,膵癌からの皮膚転移の報告は少ない.多発肝転移を伴う膵癌皮膚転移と考えられた一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.