抄録
症例は50歳,男性.既往歴:十二指腸潰瘍にて胃切除.現病歴:大量飲酒の翌朝より急激に上腹部痛が出現し重症急性膵炎の診断で入院となった.膵動注,人工呼吸管理,持続血液濾過透析等の集学的治療を行ったが膵周囲の浸出液貯留が増強し敗血症を合併したためネクロセクトミー,持続洗浄ドレナージ,回腸人工肛門造設術を施行した.術後相次いで大腸穿孔,腹腔内出血,胃穿孔を合併し最終的に腹腔内再出血をきたし第70病日に死亡した.病理解剖にて両肺,食道,穿孔部を含む胃,小・大腸,膵,腹膜に巨細胞封入体を認め全身性サイトメガロウイルス(CMV)感染症を合併した重症急性膵炎と診断された.
本症例は重症急性膵炎の治療経過中にCMVが再賦活化,増殖をきたし全身性CMV感染症を発症して予後に影響したと推測された.重症急性膵炎の後期感染性合併症としてCMV感染も考慮し治療にあたる必要があると考えられた.