2012 年 27 巻 4 号 p. 563-571
背景:膵癌はIntraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)由来浸潤癌とIPMNとは離れた部位から発生するIPMN併存膵癌からなる.しかし,IPMNと膵癌が近接している場合は両者の鑑別が困難な場合がある.またこれらは通常の浸潤性膵管癌と生物学的に異なる病態であるのか,同一の病態であるのかは不明である.
目的:IPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌を鑑別する定義として,位相的関係と組織学的移行像を重要視し,両者の臨床病理学的所見を通常の浸潤性膵管癌と比較した.
対象:IPMNに対し外科的切除を行った765例を腺腫381例,非浸潤癌157例,微小浸潤癌44例,IPMN由来浸潤癌122例,IPMN併存膵癌31例,IPMN由来浸潤癌かIPMN併存膵癌が確定しえなかった30例の6群に分類した.
結果:IPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌の平均年齢は通常の浸潤性膵管癌よりも高かった.粘液癌の割合はIPMN由来浸潤癌ではIPMN併存膵癌と浸潤性膵管癌よりも高頻度であった.IPMN由来浸潤癌とIPMN併存膵癌では浸潤性膵管癌より有意に腫瘍径が小さく,進行度も低かった.両者の生存期間はともに浸潤性膵管癌と比べ有意に良好で,全症例においても,TS2(2.0cm<腫瘍径≤4.0cm)もしくはTS3(4.0cm<腫瘍径≤6.0cm)症例のみに限っても予後良好であった.
結論:IPMN併存膵癌とIPMN由来浸潤癌は浸潤性膵管癌に比べ,生物学的に良好であり,より早期に診断され得る可能性がある.