2012 年 27 巻 4 号 p. 572-583
「背景」膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)は本邦以外では経過観察例の報告がほとんどなく,経過観察例を多数抱える本邦との違いは明白である.SCNに悪性例はどの程度存在するのか,SCNは手術すべき疾患なのかどうか,解決されていないのが現状である.日本膵臓学会によるSCNの全国施設調査を分析することで,SCNの治療指針を考察した.
「対象と方法」嚢胞性腫瘍委員会に登録されている施設15施設を対象にSCNに関してアンケート調査を実施した.集積した症例数は172例で経過観察例82例・外科的切除例90例であった.男性50例(29%)・女性122例(71%),平均年齢は60.8歳,平均観察期間は4.5年であった.
「結果」有症状例は20%で腹痛・背部痛・糖尿病の増悪・腫瘤触知・黄疸などであった.腫瘍の存在部位は膵頭部39%・体部35%・尾部22%.平均腫瘍径は4.1cmであった.本腫瘍による死亡例はなかったが,肝転移を2例(1.2%)に認めた.肝転移以外の遠隔転移やリンパ節転移は認めなかった.画像診断においては,切除例中57例(63%)で術前にSCNの診断を得られなかった.SCNの画像診断で最大の特徴である蜂巣状所見はEUS 77.5%・MRI 63%・CT 60%・体外式超音波検査60%・IDUS 45%で描出されており,EUSでの描出率が高かった.
「結語」確定診断が得られず,診断に迷う場合,圧迫による機能障害を示す症例や腫瘍サイズが大きい場合には外科切除をすべきである.