2017 年 32 巻 6 号 p. 891-896
症例は46歳女性.膵頭部に腫瘍を指摘され当院紹介受診となった.EUS-FNAにて外側区肝転移を伴う切除不能膵癌(UR-M)と診断された.FOLFIRINOX療法(14コース)が著効したため,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD),上腸間膜静脈合併切除・再建,横行結腸切除,肝S3亜区域切除を施行した.病理組織学的所見は切除部位が線維性瘢痕に置き換わり,十二指腸筋層内に異型腺管を2個認めるのみでR0切除をし得た.治療開始から21か月,術後10か月無再発生存中である.近年,切除不能膵癌に対して化学療法施行後,根治切除を行うConversion surgeryの報告例が増えてきている.FOLFIRINOX療法は遠隔転移を伴う切除不能膵癌にConversion surgeryという可能性をもたらし,予後を改善させる可能性が示唆された.