2023 年 38 巻 4 号 p. 271-278
症例1は64歳女性.体重減少をきたし検査を受けた.膵尾部に直径42mmの囊胞性病変があり,造影CT動脈相で厚さ2mmの囊胞壁が濃染された.切除標本では腫瘍は線維性被膜を有する囊胞性腫瘍で内容物は漿液性の液体であった.被膜内面には神経内分泌腫瘍(NET)G1が裏打して増殖しており,いわゆるpurely cystic膵神経内分泌腫瘍(PNEN)であった.症例2は80歳男性.糖尿病悪化を契機に検査を受けた.膵尾部に微小囊胞があり,MRI拡散強調像で高信号,造影超音波内視鏡(EUS)で直径2mmの囊胞を有する厚さ1~2mmの濃染される壁構造が観察された.切除標本では直径5mmの腫瘍で線維性被膜の内面にNET G1が増殖しており,症例1と基本的に同一の組織構造を示した.症例2は微小病変のため造影EUSによる観察が診断上有用であり,purely cystic PNENの極めて初期の像である可能性がある.